Fahrenheit -華氏- Ⅱ



トーンダウンした部屋の中、瑠華が目をあげて俺を見つめてくる。


相変わらずの無表情で何を考えてるのか分からなかったけれど、やがてその大きな目の目尻がふっと柔らかく下がった。


「そうですね。向きあって寝ましょう」


瑠華の手が俺の腰に回りきゅっと抱きしめ返してくれる。


何に効果があったのか分からなかったが、瑠華は気を許したように俺の胸に顔を埋め、


ほんの少し淡い笑みを浮かべて擦り寄ってきた。瑠華の長い髪から花ような芳しいシャンプーの香りがほのかに漂ってくる。


俺は瑠華の頭を抱き寄せた。


「啓の体温、啓の香り―――…安心します」


小さく呟かれて、俺は彼女の滑らかな額にチュっとキスを落とした。


「俺はいつでもあっためるよ」


君の冷たくなった心ごと。全部―――


瑠華が俺の首の辺りでまばたきをしたのか、睫が俺の肌をちくちく刺激した。


そのくすぐったさに思わず笑って、


「睫がくすぐったい」と笑みを漏らしながら身をよじらせると、


瑠華は意地悪のようにまばたきを繰り返して俺の首をくすぐる。


「マジでくすぐってぇ」笑い声を上げて肩を震わせたが、瑠華はやめてくれる気配がない。


このドS女王め。仕返しのつもりで、


「うりゃ」


瑠華の脚を拘束するように俺の脚で挟み込むと、瑠華が小鳥のようなくすくすと笑い声を上げた。


まるで小さな子供のじゃれあいのようだが、俺たちは過去にもこうやってじゃれあっていたことを





ふと思い出す。