トーンダウンした部屋の中、瑠華が目をあげて俺を見つめてくる。
相変わらずの無表情で何を考えてるのか分からなかったけれど、やがてその大きな目の目尻がふっと柔らかく下がった。
「そうですね。向きあって寝ましょう」
瑠華の手が俺の腰に回りきゅっと抱きしめ返してくれる。
何に効果があったのか分からなかったが、瑠華は気を許したように俺の胸に顔を埋め、
ほんの少し淡い笑みを浮かべて擦り寄ってきた。瑠華の長い髪から花ような芳しいシャンプーの香りがほのかに漂ってくる。
俺は瑠華の頭を抱き寄せた。
「啓の体温、啓の香り―――…安心します」
小さく呟かれて、俺は彼女の滑らかな額にチュっとキスを落とした。
「俺はいつでもあっためるよ」
君の冷たくなった心ごと。全部―――
瑠華が俺の首の辺りでまばたきをしたのか、睫が俺の肌をちくちく刺激した。
そのくすぐったさに思わず笑って、
「睫がくすぐったい」と笑みを漏らしながら身をよじらせると、
瑠華は意地悪のようにまばたきを繰り返して俺の首をくすぐる。
「マジでくすぐってぇ」笑い声を上げて肩を震わせたが、瑠華はやめてくれる気配がない。
このドS女王め。仕返しのつもりで、
「うりゃ」
瑠華の脚を拘束するように俺の脚で挟み込むと、瑠華が小鳥のようなくすくすと笑い声を上げた。
まるで小さな子供のじゃれあいのようだが、俺たちは過去にもこうやってじゃれあっていたことを
ふと思い出す。



