Fahrenheit -華氏- Ⅱ




はぁ、と小さくため息をつき


「心音は日本に知人が居ないんです。10年以上こちらには来てないし、少し心配で」


瑠華……心音ちゃんを心配して……


優しいんだな。


俺は頬を緩めると、


「大丈夫だって。しっかりしてるかどうかは分からないけど、何か楽天的じゃない?どうにかなるって考えるって」


俺が慰めるように言うと、瑠華はキッと目を吊り上げた。


「だからですよ。楽天的と言うより破天荒なんです。あたしが居ないと何をしでかすか分かったものじゃありません。


ああ…あたし、週明けには新聞に名前が載るようなことだけはいやよ…」


瑠華は顔を覆ってさめざめと泣き真似をした。


新聞て。


てか瑠華にここまでの打撃を与えるとは、心音ちゃんも相当なつわものだな。


「分かった。なるべく裕二のことを早く終わらせるから」


俺は瑠華の隣まで移動すると宥めるように瑠華の肩をそっと抱き寄せた。


瑠華は両手で顔を覆ったまま、俺に寄りかかってくる。


ってか『裕二のことを早く終わらせるから』発言は、俺がまるで「本妻とは早く別れるよ」と愛人に必死になって言ってるようじゃねぇか!


イヤ!


すっげぇイヤ!!


だけど明日は、その役をこなさなきゃならねぇわけだしな。


裕二め!屈辱的とも言えることさせやがって。


「心音…」


と瑠華もまだ顔を覆ったままブツブツ。


お互い、





手の掛かる友人を持ったもんだ。