Fahrenheit -華氏- Ⅱ



ストーカー女め……裕二が応対しないもんだから、遂に会社まで来たってわけか。


いや…悪いのは女じゃない。


確かに思い込みが激しいところはあるが、90%以上の割合いで裕二に責任がある。


裕二の責任…それは―――


「何で、そんな重い女とヤったんだよ!お前、いっつも後腐れない軽い女としか遊んでなかっただろ!」


俺は裕二の胸ぐらを乱暴に掴んで、エレベーターの壁に押し付けた。


「だから酔った勢いだって。ノリが良かったし、割りと好みの顔してたし」


と、裕二は両手を上げて俺の追求に逃げ腰。


「だからって相手を選べ!相手をっ!!本気か遊びかぐらい見分けられるだろうが!」


「そんなこと考える程余裕がなかったって言うか…本当にその辺の記憶が曖昧なんだよ」


俺たちは顔を合わせて、二人して深いため息を吐いた。


俺たちってサイテー。


女が聞いてたら刺し殺されるな、これは。


瑠華なんて、俺と口も利いてくれなきゃ、目も合わせてくれないだろう。


それは殺されるより酷い仕打ちだ。


そんなことを思っていると、


ポーン…


唐突にエレベーターが途中の階で止まり、扉が開いた。


びっくりしてそのままの動作で固まっていると、




「お疲れ~、二人ともお揃いで」



とエレベーターの前に立っていたのは、同期の桐島だった。


桐島か……良かったぁ。


桐島はこれから営業に出かけると言うところか。黒い鞄を下げて大判の封筒を持っていた。


俺たちを見上げると怪訝そうな顔をして、ちょっと苦笑い。


「何?喧嘩?珍しい…ってことないか」


桐島の相変わらずマイペースな物言いに、俺たちは「ははっ」と二人揃って乾いた笑みを漏らし、慌てて離れた。