Fahrenheit -華氏- Ⅱ



物流管理情報部は、本社だけではない。


宮城と栃木、神奈川と長野に名古屋、大阪に岡山、愛媛県と福岡にそれぞれ一社ずつ。


東京は本社と港支社の二社ある。


一年に一回物流管理情報部だけで、東京に集まり大きな会議の後、懇親会と表した飲み会が開かれる。


その懇親会に瑞野さんも居たっけ……?


そういえば二村も神奈川支社だったな。


そのときはなんとも思ってなかったから、居たかどうかなんて今になっては思い出せない。


「あのとき…ゲームか何かで負けた佐々木さんがビールの一気飲みをさせられそうになって、佐々木さん困り果てていらっしゃったんです」


…それは覚えている。


あいつは下戸だから。


ジョッキ一杯あけることもあまりない。


そのときも、ジョッキの半分ほどですでに顔を赤くしていた佐々木に、これ以上飲ませたらぶっ倒れるだろうことが予想できた。


まぁ俺は佐々木と飲みに行くことも良くあったから、こいつのことを分かってただけで。


見かねた俺が佐々木のジョッキを奪って、代わりに一てかイマドキ「一気飲み」とか、パワハラもいい所だぜ。これだから老舗は……気飲みをしたってわけだ。


『イッキ、イッキ!』


とはやし立てる声の中、俺はビールを一気飲みした。


「私も何事か遠目で見てたんですけど、飲み終わったあと部長はにこにこしてグラスを置いていました」


「あんたそんなことしたの?」


と綾子が隣から聞いてきて、俺は半目で頷いた。


確かにそうだった。一気飲みを終えると、いつの間にか周りの連中が面白そうに注目してたっけね。


「最初はにこにこしてましたけど、部長……真剣な顔で…」





『俺の大事な部下に無理させるのはやめてくださいね』





そう言って、一気飲みをたきつけた男の人を睨むように見据えていました。