Fahrenheit -華氏- Ⅱ



大体、男にとって気になる女からの「いい人」発言ほど、落ち込むことはない。


つまり男として、これっぽっちも意識されてねぇってことだ。


男にとっては「いい男」が最高の賛辞である。


いっそ嫌いって言ってくれればはっきりと踏ん切りがつくのに。


ほんの少しの希望を持っちまうから厄介なんだよな。


なんて一人で考えていると、


「部長ってお優しいんですね」


と瑞野さんが恥ずかしそうにちょっと笑った。


「え?」


「だっていっつも佐々木さんのこと気にしていらっしゃるから」


いえ…それは違いマス。俺は瑞野さんの本心を聞き出したいがために佐々木の話題を出したんDEATH。


なんて視線を泳がせていると、


「部長覚えていらっしゃらないですか?一年前の、港支社との懇親会。一部署だけでしたが、私も参加させていただいていたんです」


―――……え…?


一年前の…懇親会…港支社と?







『はい!佐々木くんの負け~!!取り決め通りイッキいってくれよ~』






聞きなれないおっさんが発した言葉を、唐突に思い出した。