Fahrenheit -華氏- Ⅱ




―――会長室は綾子の言った通り、俺の親父は不在だった。


他の秘書も運良く(?)席を外していて広い会長室には俺たち三人だけ。


俺は会長室の前の豪華なソファセットに腰を降ろし、デスクに戻っていこうとする瑞野さんを引き止めた。




「ハロウィンパーティー?」


瑞野さんは目をぱちぱちさせて、俺の前の立ち止まった。


「そ。10月29日の土曜日。ホントは俺ら同期でやろうか~って話だったんだけど、何せ四人しかいないだろ?

あ、でも桐島んとこは嫁さん連れて来いって言っておいたから夫婦で参加だけど」


と、さりげなく綾子を見ると、綾子はにこにこして瑞野さんを見た。


「それで俺の部署の二人も誘って合計7人だろ?、パーティーだから十人以上は居たほうがいいじゃん。で、前一緒だった緑川さんを誘ったら彼女も来たいって」


俺がシロアリ緑川の話を出したときに、ぴくりと瑞野さんの眉が動いた……ように見えた。


「緑川さんを誘うとなると、本社に居る仲のいい同期も一緒の方がいいだろうって。その話をしたら二村も乗り気だったしさ~」


変に説明くさくなったがこの際気にしていられない。とにかくパーティーに来させなきゃな。


「瑞野さんはあの二人と同期だけど、私とも部署が同じであるわけだし、来ないかな~っと思ってね♪」


と、綾子が俺の後を引き継ぐ。


俺たちの似非くさいにこにこ笑顔に、瑞野さんは戸惑ったように目をまばたいた。


「……えっと…」


「もしかして用事入っちゃってる?デートとか?」


何て言うと、


「デ、デートする相手なんていません!」


と慌てて恥ずかしそうに瑞野さんは手を振った。


…………


俺は少しだけ顔を背けると、瑞野さんの分からないところで小さくため息を吐いた。





そう





これが瑠華の言うプランAだ。