Fahrenheit -華氏- Ⅱ



瑞野さんは俺がいるとは思いも寄らなかったのか、慌てて頭を下げた。


「お疲れ様です」


綾子も少しだけ苦笑を浮かべ瑞野さんを見ると、


「今瑞野さんしかいないでしょう?休憩がてらこいつにコーヒー淹れてやって」


綾子が俺の方を顎で指し示し、瑞野さんははにかみながらもちょっと笑った。


う゛~~ん…いつも通り…


いつも通り可愛いな。


何て言うの?中身がハバネロしかない瑠華ちゃんに、1tほど砂糖を振りまぶした感じだ。


この子の好きな相手……


俺は今朝がた見た夢を思い出した。





『部長………好きです…』





あの言葉は、声は―――瑠華じゃなかった?




でも瑞野さんが俺を好きとは思えないんだけどなぁ。


何て言うの?俺のその辺の勘は結構当たるんだ。だてに長年遊んできたわけではない。


コーヒーを淹れる瑞野さんの横顔をじっと見つめて、


「……あの…」


と、瑞野さんが白い頬を赤らめて小さく声を出した。


俺の勘、外れたか??


まさか、まさかの読み違い??


なんて思ってると、瑞野さんは恥ずかしそうに顔を俯かせて、






「……部長、ファスナー開いてます……」






と、消え入りそうな声で一言。