「Don't touch me by the hand of you who touched other women!
(他の女に触れたそのて手であたしに触れないで!)」
まるで叫ぶように言うと、隣室から何事かティムが駆けつけてきた。
「Hey!Hey hey hey!What's wrong?(おいっ!どうした!?)
Louie,Are you OK?(ルーイ、大丈夫か!)」
ティムは―――あたしに打たれて頬を押さえているマックスより、両肩で荒く息を繰り返すあたしに駆け寄り、あたしの肩を宥めるように抱いた。
ティムは、古くから付き合いのある親友みたいなマックスよりも、いつだってあたしの味方だった。
お互い恋愛感情なんてなかったけれど、それでもティムはいつだってあたしに同情的だった。
聞けば彼の父親も酷い浮気癖があり、彼が幼い頃借金だけ残し母子を置いて逃げたとか。
それがあたしたち夫婦に重なったのだろう。
だけどマックスはユーリを捨てたりしない。ユーリのことは娘として可愛がっていたし、愛してもいた。
「Louie,Take a pill!Look,July is waiting beyond.
(ルーイ、落ち着いて。ほらっ…向こうでユーリが待ってる)」
ティムはよろけるあたしの肩を抱き、ゆっくりと外へ連れ出してくれる。
大きな手のひらで、宥めるように肩を撫でられると、怒りで熱くなった気持ちがゆっくりと熱を冷ましていく。
あたしは鼻をすすりながら促されるまま部屋を出た。
その扉の先で―――ユーリがお気に入りのクマのぬいぐるみを抱きしめ、幼いながら酷く悲しそうな表情を浮かべていたのを見て、
言いようのない悲しみがこみ上げてきた。



