「ち、ちょっと待て。お前は二村の…浮気を公認してるって…わけ??」
探るように聞くと、緑川がちょっとだけ目を上げる。
俺を見てその視線を瑠華に移すと、緑川は慌てて目を逸らした。
瑠華が今どんな表情をしているのか―――考えただけでも恐ろしい。
隣に居るだけで、吹雪が吹いてるような寒さだぜ?
瑠華がキレる前に、何とかことの真相を確かめなければ!
「…公認ってワケはないです。…ただ、あたしが割り込んだ形だから…何も言えないって言うか…」
「言うべきだろ。付き合ってるのはお前だろ?堂々といろよ」
「そうだけど!」と緑川は語気を強めた。
だけどすぐに項垂れる。
「……言えない…」
「どうして?」
瑠華が口を挟んだ。低い声だった。
緑川はテーブルの上に乗せた手をぎゅっと強く握り締め、
「―――…だって、嫌われたくない。捨てられたくない。あたし……二村くんのことすっごく好きだから」
と弱々しく一言。
「私には、そこまで緑川さんをないがしろにする彼を好きで居られる理由が分かりませんが」
と瑠華の言葉も冷たくて、それでもどこか強さを秘めていた。
俺は今にも泣き出しそうに目を潤めて俯いている緑川を見た。
理由―――……
なんて自分が一番分からない。そんなこと百も承知だ。
ただ、
恋は盲目だってこと。
他人が聞いたら呆れるような人間でも、好きになったら早々割り切れるもんじゃない。
俺だって―――



