Fahrenheit -華氏- Ⅱ



何だか妙に照れくさいのと恥ずかしいのとで、俺はちょっとだけふざけて瑠華の手のひらにキスをした。


瑠華はくすぐったそうにちょっとだけ笑って、


「What do you think of me? (あたしのことどう思ってます?)」と聞いてきた。


彼女の口から気持ちを確かめるような言葉が出てきたのは、これが初めてだった。


ちょっとびっくりして目をまばたかせると、瑠華はいたずらっ子のように可愛く笑った。


「English one can become bold.(英会話の方が大胆になれるの)」


「Uh-huh.(そっか)」


くすぐったそうに笑い返すと、


「Please let us know.(教えて?)」と、またもねだるような笑顔を向けられる。


何て言うのかな…こんな瑠華を見たのはじめてで、俺はどうすればいいのか分からずひたすら胸をドキドキと高鳴らせていた。


可愛い瑠華。


愛しい瑠華。


そんな風に求められると―――何だか妙に気恥ずかしい。


彼女の手を撫でるように上下させて僅かに目を伏せると、


「I like you.」


たった一言、呟くのが精一杯だった。


日本人の男が海外でモテないのは、こうゆうところだろうな。


恥ずかしい気持ちがどうしても先行する。


大事なときに大切な言葉が言えないことだ。


マックスだったら、もっとストレートに「I love you」なんて言うだろうに……


でも瑠華はちょっと悪戯っぽく笑うと、俺の唇をそっと指でなぞりながら、


「Like?」と上目で聞いてきた。