「OK. Then, let's talk in English. (分かりました。では英語で)」と瑠華が、それでも充分に声を押し殺して言った。
内緒話しをしている、まるで秘密めいた二人だけの言葉な気がして、俺の心がちょっとばかり嬉しさと、心地いい緊張感とで満たされていく。
「First of all, I apologize. I'm really sorry that I hurt you.(最初に謝ります。あなたを不安にさせたことを)」
俺にも理解できるよう、瑠華は少しゆっくりめで喋ってくれる。
俺はその言葉に首を振った。
「I'm sorry too.I was nervous. Really…(俺こそ、ごめんな。ちょっと不安だった) I thought it you get back with ex-lover.(マックスとよりを戻すんじゃないかって)」
俺の言葉を聞いて瑠華は小さく頷き、そして僅かに首を横に振った。
「No, not at all.(いいえ。それだけはないです)」
そして少し考えるように宙を見据え、
「I don't love he anymore.(あたしは彼のことを愛してない)
There is a person more important for me than Max.(あたしには彼よりももっと大切な人が居ますから)」
僅かに微笑んで、俺の頬をそっと撫で上げる。
ひやりと冷たい手の感触が、熱くなった頬に気持ちいい。
俺も瑠華の手をそっと握り返して、彼女に微笑み返した。
秘密の言葉。
秘密の会話。
二人だけの―――……
扉一枚隔てた裕二がたとえ聞き耳を立てていたとしていても、この言葉は理解できないだろう。
どんな愛の言葉を囁きあうのよりもずっと、それはずっと意味があって深いものだと実感できた。



