Fahrenheit -華氏- Ⅱ



俺が手を伸ばすと、裕二はあっさりと手を後ろにやった。


くそっ!こうゆうときだけ動きが素早い。


「何で止めたかって??ネットで高く売れるかと思ったから♪」


「裕二、てめぇ。ぶっ殺す!」


俺はのろのろと立ち上がり、据わった目で裕二を睨み下ろすと、手の関節を鳴らした。


「まぁ待て!冗談に決まってンだろ?この写真持ってたら何かに役に立つかな~と思ってさ」


裕二が慌てて手を上げる。


「何かの役に立つ?それは俺を脅すときにか」


顔を引きつらせて笑うと、裕二は苦笑いをしながら後ずさりした。


それでも体勢を立て直すと、わざとらしく咳払いをして、


「啓人くん、取引きと行こうや。今なら2本+この写真♪お得じゃね?」


とにこにこ答えた。


「な、にぃがお得だ!この腐れ外道!!てめぇに少しだけでも同情した俺がバカだったよ!」


…とは言うものの…


裕二の携帯…恐らくパソコンにも保存してあるんだろうなぁ。(ぬかりない奴だから)


こいつに他意がないにしても、瑠華のこんな写真を持っていられるだけで腹が立って血管が浮き出そうだ。


「大丈夫だ。この写真を見ても欲情しん。何せお前の女だからな」


「当たり前だ!俺はお前とキョーダイなんて嫌だからな!」


言って、はっとなった。俺の女じゃなかったらそうゆう目で見るのかよ…


いやいや…想像したくない…


がくりとうな垂れ、俺は床に手をついた。


裕二に写真を握られているのもあるが、何といっても貴重な寝顔写真…


俺の“瑠華★コレクション”(勝手に作った写真集。瑠華には内緒ね♪)に是非追加したい。


「……やらせていただきます」


泣きそうになりながらも、俺は裕二を睨んだ。