Fahrenheit -華氏- Ⅱ



はぁーーー!?


「ぅわ。汚ねぇ…」なんて裕二は顔をしかめたが、


お・前・が!!


変なことを言い出すからだろっ!!


「ぜってぇ無理。つかイヤだね」


ぷいと顔を背けると、裕二は俺の方に回りこんできた。


「頼む!啓人!!事情を知ってるのは尚更だけど、顔だけならお前だったら申し分ない!女だって納得するだろ」


顔だけなら、って随分失礼だな!


「ぜってぇイヤ!俺がお前の恋人の振りだぁ!?ふざけんじゃねぇ!こっちはお前のせいで瑠華との間に亀裂が入りそうだっつうのに!何でそこまでする義理がある!!」


裕二は一瞬怯んだものの、すぐに指二本を立てて、


「これだったらどうだ?」と真剣な顔で俺を覗き込んできた。


「金積まれたってイヤだ。俺は方法を教えてやったんだ。それだけありがたいと思え」


それでも頑なに拒否する俺に、裕二は少し考え込むように首を捻り、ごそごそとスーツの中から携帯を取り出した。


「く…できればこれは出したくなかったが、切り札だからな。これならどうだ?」


携帯のディスプレイを見せられて、半目でちらりと見ると、俺は慌てて携帯を奪った。


そのディスプレイには瑠華の寝顔が写っていた。


こっちを向いて、パジャマらしきシャツを羽織り、枕に顔を横たえて…


なんて可愛らしい寝顔…キュン♪


じゃ、ねぇ!!


「なんっでお前がこんな写真持ってんだよ!まさかお前…瑠華と…」


顔を赤くしたり、青くしたりで忙しい俺から裕二はあっさり携帯を奪っていった。


「勘違いするなよ。これは綾子んちに泊りにきた柏木さんを、綾子が勝手に撮ったものだ。お前に送ろうとしてたところを、俺が止めた」


瑠華が綾子の家に?


あー…そう言えば何週間か前そんなこと言ってたような…


ってか!


「何でそこでお前が止めに入るんだよ!」