Fahrenheit -華氏- Ⅱ



―――

「何ぃ!?男が好きなフリだとぅ!?」


裕二は目を丸めて、ぱくぱくと口を開いた。


「しっ!声がでけぇよ!」慌てて裕二を睨むと、裕二も両手で口を覆い口を噤んだ。


「これだったら女は一発でドン引き。ついでにその場に誰か居りゃ確実なんだがな」


「誰かって…恋人(男)って言う設定のヤツ?」


「まぁ俺の場合は居なかったけど、信用に値する出来事があったからな」


「…なんだよ、信用に値するって…その技を教えろよ。そっちの方がいい」


「…………」


俺は腕を組んで無言で裕二を見据えた。


―――言えるわけないだろ!!


女にアソコを握られても反応しなかったって!
※Fahrenheit -華氏- 参照


あのとき一瞬自分は不能なんじゃないかと疑っちまったが、大丈夫だった。


こいつにその技が通じるかどうか…って言うか対、シロアリ緑川だったから通じたわけであって、


裕二をストーカーしてる女がそこまで大胆な行動に出るかと聞かれれば、首を捻る。


「とにかくその技は危険だ。と言うわけで、誰か野郎に頼み込むんだな」


他人事のように言って、俺は茶を啜った。


冷めてもさすが高級中国茶。旨い。


解決に向かっていることで幾分余裕が出てきたのかもしれない。味をしっかりと舌で感じることができた。


さて、こっちは片付きそうだ。問題は瑠華―――……ちょっと寝室に目をやっていると、





「迷惑ついでに頼まれてくれないか?」





裕二の言葉に、俺は飲んでいたお茶を吹き出した。