Fahrenheit -華氏- Ⅱ



「で?どーするんだよ」


ってか、どーしてくれるんだよ!!(←こっちが本音)


「何度も言うが、それを聞きにきたんだよ。お前はなかったのか?今まで…その…柏木さんと付き合ってから、女から言い寄られたことは」


探るように裕二が目だけを上げる。


今現在進行中だ。


…なんてとてもじゃないが言い出せん。こっちのはもっと深刻…


真咲の狙いを、俺はいまいち掴めていない。


俺が幸せになるのが許せない、と言っていたが、どこまで本当でどこから嘘なんだか。


ある意味裕二の方が楽と言っちゃ楽だ。


「俺は関係のあった女は切ったからそーゆうのはない」


一人を除いてはな。ってかあいつともちゃんと切れた筈だ。


この会話が瑠華に聞こえてやしないかと、寝室の方を気にしながら俺は忙しなく茶を啜った。


「俺だって切ったつもりだよ」と裕二が情けない声で答える。


「切れてねぇじゃねぇかよ」


「俺は切ったと思ってたんだよ」と裕二も言い返す。


何だか堂々巡りだな。こんな会話飽きたぜ。


「OK」俺は両手を広げると、それをゆっくりと下に下ろす仕草をした。瑠華が誰かに何かを言い聞かせるときにする仕草だ。


自然、俺にも移ったんだな…


「俺だって昔の女じゃないけど、迫られたことはある。だけどそれを乗り切ってみせた。その技を伝授しよう」


俺はことさらゆっくり言って、真剣に裕二の顔を覗きこんだ。