冷静―――と言うよりも考えがまったく分からない。
紫利さんにあれこれ聞きたがってる―――ようには見えないけれど、違った意味での興味がありそうだった。
紫利さんもさすがにこの申し出には戸惑った様子を見せていたが、瑠華がそう言い出した以上、俺は従うしかない。
隣の椅子を引き、「こっちにおいでよ」と招くと、そこでようやく紫利さんが腰を上げた。
瑠華と紫利さんに挟まれた俺。
この状況、どうよ??
目の前の大将はにやりとしながら、「両手に花だな」なんてすでに面白がっているふしがあるし。
瑠華も紫利さんも気の強い女だ。
どちらかが何かを言って攻撃を始める―――と言うのを想像していたけれど、
意外にも場は和んでいる。
「大学の教授夫人?素敵ですね。品があってとってもお似合いだと思います」
瑠華が頬を緩めてうっとりと喋るその顔に嫌味なんて少しも感じられないし、
一方の紫利さんも
「あなたが入ってきたとき、啓人が騒いでたのよ?すっごい美人が入ってきたって」
と、悪意のない笑顔で今更暴露してる。
敵対するかと思いきや、こっちが拍子抜けするほど女性陣はあっさり仲良しムード。
紫利さんは気が強いとは言え、そこまで攻撃的な性格ではない。ましてや過去の男の現状についてあれこれ言うたちでもない。
だけど瑠華は……
「素敵な方ですね」なんて言って、可愛らしく吐息をついている。
敵意は持ってないけれど―――俺が疑いたくなるぐらいの好意を紫利さんに抱いたようだった。



