Fahrenheit -華氏- Ⅱ



「そもそも部長は柏木補佐のどこが好きになったんですか?やっぱ顔?」


「顔……?」


ん~~~…まぁ、かなぁり好みの顔ではあるが…


「それだけじゃねぇよ」


俺は曖昧に言ってお冷に口を付けた。


瑠華のどこを好きかなんて、一言で言い表せないな。


ちょっと冷たいけど、ちょっと怖いけど……ちょっと変わってるけど……


だけど


それ以上に優しいし、強いし、同じだけ弱くもある。頼りたいし、守ってあげたいし、


俺の中に抱く感情は複雑で、だけどその難しい部分が全部好きな気持ちに繋がっている。





「お待たせいたしました。メカジキの香草焼き風ムニエルのランチです」


ウェイトレスが料理を運んできて、緑川もそれ以上は突っ込んで聞いてこなかった。


助かったと安堵しながら、俺は手元にあったフォークとナイフを緑川に手渡した。


「ありがとうございます♪」なんて笑顔で言って、そのすぐ後に「やっぱ手馴れてますね」なんて意味深に笑みを浮かべる。


「お前は……、一言余分なんだよ!」


思わず素で突っ込むと、緑川はちょっとだけ舌を出して笑った。


意識してやったことじゃないだろうけど、俺はこうゆう女らしい仕草結構好き。


瑠華には絶対望めない仕草だな。


暗い雲行きになっていたが、そこそこ楽しく食事ができそうだ。