愛を教えて。

いつもと変わらない日常。

糸井さんのことなんて、毎回あんな感じなはずなのに、なんで今日に限って動揺なんてしてるんだろう。

なぜ、今日に限って、今に限って涙なんか溢れてしまうんだろう。



…きっと、ハーブティのせい。
カモミールには、確かそういうストレスを解消させてくれる効果があったはず。

そう、これは、カモミールのせい。





カモミールティを飲み終える頃には、涙もほとんどおさまっていて、脳も今の状況をはっきりと理解できるようになっていた。

隣で楽しそうに雑誌を読んでいる彼と、その横で紅茶をすする私。


私は何をしているんだろうと、ため息がもれる。



帰ってしまおうと思ったが、何か心につっかえるものがある。

今ここで、帰ってしまえば、私の中に“罪悪感”がずっと居座りそう。

いつでも彼に対しては、冷たく接していた私であったけれど、私もそこまで冷酷な人間ではないということだ。


なぜそんな気持ちになるのかは、明白だった。



彼に助けてもらったから。


頼んでもいないけど、本当に助かった。

糸井エリナを家に上げずに済んだ。
時計を奪われないで済んだ。



お礼を言わなければ……とは、思うが、なかなかその一言が言えそうにない。


言い訳するようだが、彼は、私の部屋に無断で入り、料理までしていった新手の変質者。

そんな男に、礼を言うことが間違っている気がしてならない。




でも、助けられた事は事実。