愛を教えて。

“許可はとってある…?”


どういうことだろう。

私が許可する訳はないし、今後許可するつもりもない。


「一体どういうこと?」

と聞こうとしたところで、エレベーターが来た。

彼は「早くおいで」と半ば強引に私の腕を掴んでエレベーターに乗せる。


怪訝な顔で響の顔を見ると、彼はいつものようにニコニコ笑っていた。


つかめない。


ほんと、つかめない男。





「俺んちはね、7階、707号室。ラッキーセブンいいでしょ」


そう楽しそうに話しながら、7階のボタンを押す。


「この前はごめんね。自分の家に帰ったつもりが、あやねちゃんのところに帰っちゃって。あ、カレー食べた?なくなったんならまた作りにいくよ」


「302号…」

以前、彼は私の部屋から出ていくとき、302号室にいるからと言っていたのを思い出した。


「あぁ、302号室は飽きちゃったから、引っ越したんだ」

飽きた?

どの部屋も間取りは同じなはずなのに。

景色のことを言っているのだろうか。


「綾音ちゃん気付かなかった?ドアの前にちゃんと≪707号室に引っ越しました≫って張り紙してたんだけどな」

「あなたの部屋になんか行ってない」


「あーやーねーちゃん!“響”だよ、“あなた”じゃなくて」

「うるさい」

私の日常で、ここまで他人としゃべったことなんてない。
…本当にこの男は、どこまでも自由な人間なんだろう。


「ったくぅ、響って呼んで。一生のお願い」

子犬のような目でこちらを見てくる。
顔をそらせても、視線が刺さって痛い。


「………ひ…びき」

「うん!ありがとう綾音ちゃん。あっついたよ~7階」