愛を教えて。

ビクっと体が無意識に反応する。


「一緒に帰ろうよ。…ね?」




有無を言わせぬ言葉に、私はただうなずくしかできない。

せっかくの静かな放課後、そんなものはもう幻でしかない。



もう、捕まってしまったものはしょうがいない。
あきらめてしまおう。



校舎を出るまで、私も糸井エリナも口をきかない。

仮初めの友人。

話が合うわけもない。




糸井は携帯を片手で弄りながら、巻き髪の先を手に巻きつけて、歩いている。
肩にかけたカバンには、大きめの缶バッチや、イニシャルのキーホルダー、ハートを抱きしめたクマの小さなぬいぐるみが装飾されている。


私はただぼーっとそのクマのぬいぐるみを眺めた。