愛を教えて。

時計がないと少し困る。


“友人”たちは時間にとても厳しい。

少しでも遅れたりしたら、本当に面倒くさいことになる。




仕方がない、今日だけ兄からもらった時計をつけるかな。


本当はつけたくないけど。



あれは、兄がいつも身につけていた時計。


兄が海外に行く時に、お守り代わりに私にくれた。




大切な…大切な時計。



これだけは、“友人”たちにとられないようにしないと。


マンションを出て、通いなれた道を歩く。


兄の腕時計を確認すると、時刻は「7時40分」。


早歩きで向かえば、始業時間には間に合いそう。


…よかった。



“友人”たちは、始業時間ギリギリに教室に入ってくる。



彼女たちを出迎えるのが、私の最初の仕事。


彼女たちより遅れて学校に行ったときは散々だった。



“やっぱり、白石財閥のご令嬢ってなると、遅れてきても先生に怒られないからいいわね”




“お嬢様ってだけで、先生にひいきされて、マジ調子乗ってる”


クラス中の女子が口々に陰口をたたきだして、教科書を破られたり、トイレに閉じ込められたり。



小学校低学年レベルの嫌がらせを受けた。





そんな低レベルな嫌がらせでも、長く続くと苦痛になる。