愛を教えて。

通帳と、印鑑どこにしまってたかな。


あとは、少しの着替えと制服があれば生活はできるわね。


今日は、どこかのホテルでも泊まろう。


そう考えて自室に向かおうとすると、


「あやねちゃん。俺が出てくから」


と、意外な声が背後から聞こえた。





「カレー多めに作ってたから、あと3日分はもつと思う。食べてよ」



そう言って、私の横を通り過ぎて玄関へ向かう桐生響。



本当に意味がわからない。


あれだけ、ごねていたのに、私が出て行こうとすると、今度は自分が出ていくと言い出す。


あまのじゃく…。




「じゃ、俺302号室にいるから。会いたいときは来てよ。んじゃ」




あまのじゃくな男は、そう言うと、玄関を開けて出て行った。


閑散とした部屋に残るのは、茫然とした私と、カレーの香り。