愛を教えて。

ここは私の家で、私しかいないはずのマンションの一室。


今まで他人が足を踏み入れたことはない。

私だけが住み暮らすこの家が、一番落ち着く場所なのに…どうして桐生響という男が、さもそこにいることが自然だと言わんばかりにいるのだろう。


そもそもこのマンションのセキュリティーは万全のはず…。



「よし、できた」




思索に耽っていると、鼻歌まじりの男の声がした。




「できたって…あなた勝手になにしてるんですか」




男は人差し指を前に出して、「ちっちっちっ」と頭を振った。


「“あなた”じゃなくて“響”な」


「そうじゃなくて…」


「さんはい!リピート アフター ミー“ひびき”」


カタカナ発音の英語でそう言われても困る。