「あ~、腹減った」
懐が天井に向かって言った。
「今日の給食、何かなぁ」

次の瞬間、懐は献立カレンダーを覗き込んでいた。

「げっ。クラムチャウダーとイカリング!?
 ご飯と野菜しか食うものないじゃん」

「嫌いなの?」
わたしは、訊いた。

「無理無理。おれ、貝とイカ嫌いー」

わたしは、思わず噴き出した。
「懐なのに……ぐふっ」

「あっ。それいっちゃだめでしょ」

くだらないことなのに、おかしくてしょうがない。
ツボにはまって、抜け出せない。

「そうだ!ちはる、ほっそいからおれの分あげる」

わたしの、骨と皮だけみたいな体を見て言った。

「そんな食べれるわけないじゃん」
もっともなことを言った。
「細すぎるモデルは、世界的にも人気ないんだよ」
「いや、モデルじゃありません」

「でも、もうちょっと太ったほうがいいよ。うん」
懐は、急に真顔になって言った。

なんでそんなことを言うの?
青白くてガリガリのわたしを心配してる?
まさか。

色素に乏しいわたしの顔。その中で、目だけがグリグリ大きいわたしの顔を見つめて、懐は言った。

「おれの好み」
そして、ニヤっと笑った。