もし、あそこで謝られなかったら、わたしは勝ち誇った笑みを浮かべて母を見下し続けただろう。

一生母を悪役にして、わたしは悲劇のヒロインを演じきる。

でも、謝られた。
確かに、「ごめんね」と。

そしたら、一生悪役をやらせる訳にはいかなくなるじゃない。

行き場のない真っ黒な感情をぶつける場所がなくなる。

あのタイミングで「善」を出すなんて、わたしはどうしたらいいの?

いいお母さんになるなんてずるい……。