頭の中ではサイレンが鳴り響く。「なおくん」だ!「なおくん」だぞ! 「大丈夫ですか?」 慌てたようにそういって、彼は手際よく床にぶちまけられた私のファンシーな荷物をまとめていく。 その時間は、永遠のようで一瞬のようで、気味悪い魔法のように苦痛に感じた。 私は異常にどきどきして、せっぱ詰って、何を思ったのか彼からひったくるようにしてそれらを抱え、 「あのっ・・・あ、ありがとうございました!」 と言って、逃げるように店を出た。 「君!」となおくんが止めるのもおかまいなしに。