なぜかこの私が一躍有名になったのは
“美人教師”という間違ったレッテルを張られたから。
ただみんなと歳が近いだけだし、
地味なスーツ着てるだけなのにな…。
休み時間も私のデスクの周りには
生徒で賑わってる。
やっとの思いで1人になれたのは、
放課後の図書館だった。
深呼吸して、誰もいない広々とした
図書館を歩く。
奥の方で洋菓子の本や、パティシエに
関する本がズラリと並んであることを
思い出し、早足でその場所へ向かう。
在学中よく読んでいた洋菓子の本を
手に取った。
1番最後のページに、走り書きで書いた
自分の筆跡を見つける。
“絶対パティシエになる!”
懐かしさのあまり、笑みがこぼれた。
何冊か夢中で読みあさっていると、
警備員が戸締まりをしに来た。
慌てて図書館を出て、廊下を走る。
校舎に人影はあまりない。

