走ってきた様子もなく、涼しげな顔。
茶髪で無造作ヘアーな君は、ただ
真っすぐに私を見つめてる。
『なーにがセーフだ!初日から遅刻か、霧島~!』
萩原先生の呆れた声に反応して私は、
思わず視線を外してしまう。
『へーい、スミマセンでしたぁ~。』
スタスタと踵を踏んだ上履きを鳴らし
ながら席へと移動する彼。
『あ、霧島。今日からこのクラスの副担任をしていただくことになった、長瀬友香先生だ。授業に遅刻して、あんまり迷惑かけるんじゃないぞ。』
『へーい。』
チラリと目を私に移した彼に、
『よろしく』と頭を下げた。
無言で彼も頭を下げてくれた後、
出席簿に目を落とし、彼の名前を確認する。
出席番号11番。
霧島 準。
(キリシマ ジュン)
これが、私と君の、唐突な出逢い。
君が私に恋をした瞬間。
この時の私には、
そんなこと感じてる余裕なんて、
これっぽっちもなかったけど……。

