「去年…2010年のあの猛暑は、実は国家プロジェクトによって創られた人工の暑さだったのだよ!」


「まさか!」


私は、その幹事長の言葉をすぐに受け入れる事が出来なかった。


直ちに、目の前に置かれた『マル秘ノート』を手に取り、内容の確認にかかる。


表紙をめくると、最初の見開きのページには、大きさの違う幾つかの丸が並べて描かれていた。


その丸の中には、それぞれ『太陽』『地球』『月』といった風に惑星の名前が記されている。


「最初のページには、分かり易いように私が絵を描いておいた。
どうだね、一目瞭然だろう?」


「いえ…これが何を意味しているのか、私にはさっぱり……」


「えーーっ!超分かり易いのにっ!」


不満そうに口を尖らせて反論する幹事長には申し訳無いが、大体にして、絵が下手すぎるのだ。


太陽より地球の方が大きいし、月は三日月……それに、火星に『輪』が付いている。横に描かれているタコみたいのは、火星人のつもりだろうか?


この絵ではまるっきり意味が分からないので、私はページをめくり次の文章に目を通した。


それは、環境庁の官僚が書いたらしき文面で、少々難しい専門用語はあるが、先程の絵よりはよっぽど理解可能な文章であった。