「すいません!
冷やし中華を一つお願いします!」


暑苦しいネクタイを緩め、額の汗をハンカチで拭いながら、私はあの店で再び冷やし中華を注文していた。


「はい~お待ちどうさま、冷やし中華ね」


相変わらずの心地良い笑顔を浮かべ、おばさんが冷やし中華を運んで来てくれた。


私は、あまり食べ物に執着が無い。



が、しかし!



今日のこの冷やし中華は格別に美味しかった!



うん、これぞ冷やし中華!



冷やし中華最高!



冷やし中華万歳!




あっという間に冷やし中華をたいらげた私は、勘定を済ませ店の外にに出た。


そして、午後の仕事に向かう為歩き出した。


そして、ふと後ろを振り返ると、熱くなったアスファルトから沸き立つ蜃気楼に揺らめきながら、オアシスのようにあの店のノボリが私の目に入った。





『冷やし中華はじめました』




Fin