《短編》夏の雪

「何それ? あたしのこと口説いてる?」

「さぁ?」


死んだ魚みたいな目があたしを捉えて細められる。

ちょっとキモイ。


この人はいつもこうやって、あたしの反応をうかがおうとする。



「ちょっと、前見て運転してよね。危ないから」


あたしは修司くんとどうにかなる気はない。

雪ちゃんの友達だからとかではなく、そうなっちゃったら、この楽しいだけの関係の、何かが変わってしまいそうで。


修司くんは何を考えているのかわからない顔で笑ってた。



「てか、その顔怖いから。あんた普通の頭で普通にしてたら格好いいのに、色々ともったいないよね」

「うるせぇ、ミカン星人。俺はこのままでもモテてんだよ」


毒づく修司くん。


でこぼこ道で車が跳ねる度、雪ちゃんは「んー」と唸り声を上げる。

それでも起きてくんない。



「しっかし、ほんと寝たら起きねぇ野郎だよなぁ」

「だね」

「もうここに捨てて帰るか?」

「それもいいかもね」


あたしは他人事のように言った。



「あ、でも、そしたら俺とお前のふたりになるよな」


何が言いたいのか。

あたしは運転席の修司くんを一瞥し、



「3人だよ。あたし、幽霊とか見える人だから」


っていうのはまぁ、冗談だけど。


修司くんは、瞬間、「はぁ?!」と顔を歪める。

本気にしてんじゃん、こいつ。