相変わらずエアコンの効きが悪い車で、窓を全開にし、音楽をガンガンに掛けて、雪ちゃんは大声で歌ってる。
修司くんは眠そうな顔でシートに深く身を沈め、「勝手にしやがれ」と吐き捨てて以降、喋らない。
自由だなぁ、こいつら。
「雪ちゃーん。どのくらいで着く予定ー? あたし明日の昼に用事あるから、それまでには帰らなきゃまずいんだけどー」
「んー、どうだろ。朝までには戻ってこれると思うけど」
「ふうん。ならいいや」
あたしは、途中のコンビニで食料調達とばかりに買い込んだお菓子の入った袋を漁る。
なるようになれ。
雪ちゃんに付き合ってる以上、文句なんて言っても始まらないし、楽しむしかないから。
「なぁ、俺のおにぎりせんべいは?」
「ん?」
「って、てめぇ何食おうとしてんだよ! それ俺んだろうが!」
修司くんは恐ろしい形相で、まだ袋を開けたばかりのおにぎりせんべいをあたしの手から奪う。
「ひっどーい! あんた今寝てたじゃん!」
「寝てねぇよ! つーか、寝てたら人のもん食っていいのかよ! 俺は瞑想してただけだ!」
「何それ、わっけわかんない!」
おにぎりせんべいを奪い合うあたし達を横目で見て、雪ちゃんは大爆笑だった。
「はいはーい、喧嘩しなーい。男子は女子に優しくしましょうねー」
修学旅行の引率の先生みたいな口調で言った雪ちゃんは、仲裁ついでにおにぎりせんべいを左手でひょいと奪う。
あ、食った。
一番に食いやがったよ、こいつ。
「てめぇ、雪!」
子供みたいにマジになって怒る修司くんは、運転中の雪ちゃんに掴みかかろうとする。
その瞬間、ハンドルを取られ、車体が大きく左右に揺れて。
「うわっ!」とみんなで叫んで、また笑った。


