高橋力也は大阪市内の病室でDSの画面に夢中になっていた。

「ちょっと力也! 学校を休んでいるんだから、ゲームばっかりしないで、勉強しなさい!」

「もうすぐ、終わるから」

力也は母の小言も上の空である。

「ねえ、力也。今日はクリスマス・イブだよね」

「今年はDSの新しいソフトが欲しいんだけど」

「あんたね。来年、5年生になるんだから、サンタさんはもう卒業」

「ちぇっ、今年はサンタさんのプレゼントもらえないんだ。小学生の頃に夢を壊すと碌な大人にならないって、テレビで言ってたで」

「あのね。お母さんもクリスマスから病院にいたくないの。年末にかけて大掃除やら忘年会やら色々あって忙しいのに、それにね、ここの病院代もお金がかかるのよ」

「……ごめんなさい」

母親はちょっと息子に言い過ぎたと思ったのか、
少しため息をついた後に、

「どんなソフトが欲しいの?」

と言った。