西村は鮎川希とお別れした後、タクシーを拾い実家の堺市中百舌鳥の家へと向かった。

近くには仁徳天皇陵(大仙古墳)があり、
春になるとその古墳の近くにある大仙公園の美しい桜が、 どら池沿いに咲き乱れる。

「ただいま。おかん、もうこんな時間やのにまだ起きてたんや」

「晩ご飯は食べてきたん?」

「キタで軽く食べてきたで。なんや、オヤジも起きてるんかい」

「恭平にもちゃんと話して置かなければあかんことがあって……」

目の前の母親が神妙な顔つきになっている。