さっきまで鋭い目付きをしていた坂野は


今、ここには居ない。


代わりに居るのは、


怒りと恐怖が入り混じった表情をする


坂野だった。


よく見ると、膝ががくがく震えていた。



「…結局ビビってんじゃん」



ユカが言葉を吐き捨てた。


意外と雰囲気に飲まれるタイプらしい。



「なぁに、ビビってんの?
 どんな事されると思ってんの?
 大丈夫だよー、
 犯したりしないからぁ!」



坂野を覗き込みながら言葉を吐き捨て


笑うユカ。


どうやら坂野が異常に怯えているのが


ツボのようだ。



「ねぇ、何でそんなに暗いの?
 教室のね、空気が淀むんだよね。
 もう少しさ、
 明るく振舞おうとか思わないの?」



一見優しく聞こえるようで、


ちっとも感情の篭っていないあたしの言葉。


本心だった。


クラスを取り仕切っているあたしを


こいつの暗さがイラつかせるのだ。