「──実はさ、つい最近フラれたんだよね」


 唐突すぎる話題転換に、僕は思わず彼を見上げた。

 だって、余りにも話題が飛びすぎている。

 どうして友人でもクラスメイトでもない、ただの後輩の、図書委員をやっているだけの僕に失恋話をするのか。


「そんで、それが吹奏楽部の女子にバレて揶揄われて……今に至る?」

「意味が分かりません」

「俺、吹奏楽部なの」

「はぁ……」

「分からない、って顔してるよな」


 さっき、意味が分からない、って言ったばかりなのに。

 この人が僕に何を言いたいのかさっぱり分からない。


「……悪ぃ。俺、よく言葉が足りないって言われるんだよね」

 えーと、って言って聞いてもいないのに喋り出した彼は、あの読書量からは考えられないほど口下手に説明を始めた。


 付き合ったばかりの彼女にフラれたこと。

 それを吹奏楽部の女の子達に見抜かれ、挙げ句何人もの子とメールアドレスを交換してメール地獄に遭っていること。

 そういえば、クラスの女子も似たような事を言っていた。

 きっとメールの相手はこの人なんだろう。