「──……っだぁ! くっそ、全然読めねぇじゃんかよ!!」

「面倒なら返信しなければいいんですよ」


 思わず、僕はそう呟いていた。


「そうなんだけどさ、貰ったまま返信しないのもなんか悪いじゃん」

「優しいんですね」

「そう見える?」


 ギッ、と椅子を鳴らして立ち上がった彼は、僕の隣にやって来た。


「誰かに優しくすんのは、自分が優しくされたいから」

「何かの受け売りですか」

「そうかもしれないけど、俺の本音?」

「いい人ぶってるんですね」

「うわ、キビシイこと言うなぁ」


 彼は僕が読んでいる本の真横に片手を突いたかと思うと、そのままカウンターに腰を掛ける。

 床から離れた足が、僕の椅子を軽く蹴った。