「──お務めごくろーさん」


 週に2回、図書委員の僕には放課後の貸出し当番が回ってくる。

 そして、図書室のカウンターに座って本を読む僕の目の前にドサドサと本の山が築かれた。

 2、4……。

 全部で6冊。

 文学小説から写真集まで全てジャンルはバラバラ。


「貸出カードに記入を……」

「全部読んでいくから書かなくていいだろ?」


 僕が本の山に手を伸ばすのと同時に、大きな手がそれを軽々持ち上げた。


「全部、って……。読むなら向こうの……」

「どこだって変わらねぇじゃん」


 僕の声をあっさり無視してカウンター後方の司書席を陣取るこの人は、うちの学校の生徒会長。

 どういうつもりか知らないけど、放課後の図書室にやって来ては閉館ギリギリまで本を読む。

 必ず、司書席に座って。

 絶対に、本は借りない。

 どんな本でも、持ってきた分を全て読みきる。

 僕なんて、小説1冊で2時間なのに。


 ほんとこの人、よく分からない。

 実はちょっと苦手だし。


 生まれつきらしい茶髪とか。

 女子がカッコイイって騒いでいたりとか。

 何も考えて無さそうな軽い口調とか。

 全校生徒の代表である人物がこんなヤツでいいのか、って思う。


 とはいえ、僕はこの人のことは何も知らない。

 僕が知らないだけで、実は生徒会長になれるだけの実力や実績、信頼を隠し持っているのかもしれない。