【短編】ぼくはポチ


「ミキ、結婚してください」


【ケッコン】?

なんだ?

それは…。


ぼくが初めて聞く言葉―…。


そして、

長らく黙っていたミキちゃんが口を開く。


『じゃあ、昨日と同じ事聞くわ…』


その声の後にドアが開く音がした。

開くドアの向こうは

寝巻き姿のミキちゃんが

立っているのだろう。


「あたしが貴方と結婚するのなら…」


ミキちゃんが大きく息を吸う。

そして真っすぐな声で

確かめるように言う。


「あたしや将来生まれてくる子供に
 手をあげない?」

「もちろん」

「ポチを連れていってもいい?」


ぼく?

どうして、ぼくが?


ふとママさんの顔を見上げると

優しく笑っていた。



そして、

ママさんの表情に負けないくらい

低くて優しい声が聞こえた…―。