賑やかな城塞都市にも、夜の帳が下りてくる。

ここは大衆酒場。

酒場と名がつくものの、食事も出来るので子供でも出入りできる。

その大衆酒場には、今宵も多くの狩猟者が集まる。

タンブラー片手に過去の狩りの自慢話をする者、貴重な素材で鍛えた得物の薀蓄を披露する者、今度討伐に行く竜種についての相談をする者。

ここは飲食の場である以上に、情報交換の場でもあるのだ。

…そこで静かにタンブラーを傾けるのは、一人の女性狩猟者。

燃えるような赤い髪が特徴で、ひょろりとした長身。

落ち着いた雰囲気が、大人の女性である事を物語る。

名はフューリー。

過去の竜種討伐で得た素材で強化した赤い鎧と『ある武器』で、この界隈ではちょっと知られた存在だった。