竜を狩る者

コウは尚も単独でムシュマッへとの交戦を続けていた。

「くっ…」

腰のベルトに納められた投げナイフを確認する。

あと五本。

如何にワイバーンの爪で作られた切れ味鋭いナイフといえど、ムシュマッへのような超大型竜種にはさしたるダメージを与えられない。

大きく嘶き、ムシュマッへの長い首がコウに食らいつきにかかる!

「うわわわわっ!」

複雑な路地を走って、ムシュマッへの牙から逃れるコウ。

しかしムシュマッへの首は一本ではない。

残る首が、四方八方からコウに襲い掛かる!

「女の子相手に大勢で卑怯よっ!って…首が多いだけだから卑怯じゃないのか!ひぃいぃっ!」

何やら口走りながら、正面から、左右から、背後から迫ってくるムシュマッへの首をかわす。

コウがムシュマッへより上回っているのは素早さだけだ。

そもそも経験の浅いコウに、ムシュマッへの相手が務まる筈もなかった。