竜を狩る者

大小無数の岩の欠片が転がる不安定な足場。

それをものともせずに、ローゼンはしっかりと地面を踏み締めて剣を構える。

最強の竜種といえど、所詮は獣か。

これで隠れているつもりらしい。

霧に身を潜めても、強烈な獣臭がプンプン漂っているというのに。

(どれ…俺からきっかけを作ってやるか)

ローゼンは腰の後ろに挿していたナイフを抜くと、獣臭のする方向に投げ放つ!

ただのナイフだ。

命中した所で竜種の鱗を貫通するまでには至らない。

しかし挑発には十分。

ナイフを投げつけられての宣戦布告に。

「出たな」

霧の中から、真っ黒な竜種が顔を覗かせた。

頭部に二対、鼻先に一本、計五本の角。

全身の鱗はまるで棘のように鋭利であり、背中からは蝙蝠のような巨大な翼が生えている。

長い尾の尖端は刺股のように分かれた棘がついていた。

これがニーズヘッグ。

この大陸で最強と目される漆黒の竜だった。