「え、ぃぃの?」
「ぃぃ。だって瑞季の荷物、まだ俺ん家に残ってっし。まだ瑞季の家でもあるだろ?」
「…。じゃあ…お邪魔します…。」
瑞季が頭を下げてから家に入る。
その時、チラッと見えたキスマークにまた、イラッとした。
――ガチャン――
ドアが閉まる音が静かに響く。
「…。」
「こっち来て。」
玄関で靴を脱いだまま固まる瑞季の手を引いて寝室へと進む。
「こっちでぃぃ。」
すると、瑞季はリビングで足を止めて俺の手を引っ張ってきた。
「駄目。俺はこっちがぃぃ。」
「私はこっちがぃぃの。」
俺が首を横に振ると、瑞季も首を横に振る。
「瑞季に決定権があんの?」
フッと笑って瑞季を見ると、瑞季は頬を膨らませて寝室へと足を進めた。
「よく分かってんじゃん。」
俺が笑ってそう言うと、瑞季は舌を出して俺にあっかんべーとしてきた。
「……幼稚…。」
「煩い!」
俺がプッと笑う真似をすると、瑞季は寝室に一人で行ってしまった。
…子供っぽい処は変わってねぇんだな。

