「本物…?」
「ふざけてるの、渉。」
"渉"。
瑞季が俺の名前を言っただけなのに、俺の名前が特別に聞こえた。
「…そういえば…どうしたんだ?」
「…ちょっとね。」
会話が途切れないように瑞季に話を振ると、瑞季は気まずそうに俺を見た。
「ちょっとって?」
続きを話すように促すと、瑞季は俺を見る。
「中村くん…無理だった。」
「はぁ?」
意味分かんねぇ。
急に無理とか言われても理解が出来ねぇ。
俺が瑞季の言ってる事が理解できねぇという顔をすると、瑞季が眉毛を下げた。
「話したら長くなるんだけど…。」
「え。ちょっと待て。」
床を見ながら説明しようとする瑞季を止める。
すると、何?と上目遣いで俺を見てきた瑞季。
それに俺が勝てる訳がねぇ。
瑞季から目を反らす。直視が出来ねぇ。
「…っ、えっと…取り敢えず中に入れよ。外で長話は風邪を引く。」
もう10月中旬。
外は寒い。

