「んな訳ねぇだろうが。」
「それがそんな訳あるんですよねぇ。ダンナ。」
だからてめぇは何キャラなんだ。
もうコイツには付いていけねぇ。と思って真っ直ぐ前を向く。
でも、マイペース祐毅はそんな俺の事なんか気にも掛けずに話を続ける。
「ほら、あの遠藤の向こう側に居る女とかさ、結構前から渉の事を見てんぞ?」
はぁ?と面倒くさそうに声を出せば、
まぁ一応見るだけ見とけって。
と祐毅が俺の顔を無理やり左に向ける。
えぇええっ。今、グキッつったんだけど。
首がグキッつったぞ。お前はもう少し落ち着け。
もう少し優しく俺の事を扱えよ。
と思いながら仕方なく瑞季の向こう側に居るという女に視線を向ける。
するとパチリ、見事に目が合った。
「あ。」
思わず声が漏れる。
「ん?どうしたんだ?渉。知ってた奴だったのか?」
俺の動きが止まった事に気付いた祐毅が俺の顔の前で両手をブンブン振ってくる。
邪魔だ。
見えねぇって。
「あ゙ー…俺と瑞季の喧嘩の原因だった奴。」
言葉を濁す俺に、祐毅は
うぉ、マジか。
と楽しそうに言う。