「私の事、嫌いですか?」




子犬みてぇな目で見つめてくる女を見て、


あ?


と声を漏らす。




「あの、前からぃぃなって思っ「ってか、誰?」へっ?」




俺、この女見た事ねぇんだけど。



タメ…?


え、後輩?



全っ然分かんねぇ…。




ん?と首を傾げる。




「俺、君の事知らねぇんだけど。」



「えっと…」




困ったように俺を見てくる女。



んだよ。さっきも思ったけど俺は忙しいんだよ。



今日は特に忙しいんだよ。



人生で一番の大変なイベントであり、大事件なんだよ!




はぁ、と小さくため息をつく。



あぁ、折角空気吸ったのにまた逃げちまった。


意味ねぇな。



あーぁ、と心の中でため息をつく。



瑞季がこの前言ったように、ため息をつくのは俺の"癖"だな。




あ、女の話を聞かねぇと。



思い出した、と顔を上げれば女は困ったように眉毛を下げていた。




「私、同じ学年。渉くんと一緒の2年だよ。


しかも、学部も学科も一緒なんだけど…。」



「あ、そうなの?わりぃ。全然分かんなかった。」




瑞季に早く逢いてぇな。


それだけが俺の頭の中を占める。