ココアを無言で見つめる。
おかしいな。
ココアが好きな事、瑞季に言った覚えはねぇんだけど。
ココアを口に少し含む。
すると、ココアの優しいまろやかな風味が口に広がった。
「あ、ココア気に入った?」
キッチンから顔を覗かせてフフッ、と笑う瑞季に俺は素直に首を縦に振る。
「うまい。」
「良かった。」
「俺、ココア好き。」
「え?そうなの?知らなかった。
じゃあ、ココアにしておいて正解だったんだね。」
そこで、疑問が生まれた。
何でココアにしたんだ?
冷蔵庫に珈琲が入ってたのに。
「何でココアにしたんだ?」
「私が好きだからよ。」
ここで瑞季の表情が一瞬固まったのを俺は気付かなかった。
「そうなのか。俺と一緒だな。」
「そうだね。」
優しく笑った瑞季に、俺も優しく笑った。

