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「…たる、渉。」
「ん、」
優しい声が聞こえる。
俺の心にストンと真っ直ぐ届くような、そんな声が。
「朝はパン派?それともご飯派?」
「パン…。」
「そう、分かった。」
「瑞季、おはよ。」
「おはよう、渉。」
随分優しいんだな、と思った。
独り暮らしの俺には、起こしてくれる奴も居る筈がなく、勿論、飯を作ってくれる奴も居ねぇ。
だから、起こされて朝飯の匂いがしてくるなんて事に
「ぃぃ匂い…。」
感激した。
「もう食べる?」
「食う…。」
こっちに用意してあるから。
と少し大きめな声で俺に言った瑞季に短く返事をしてリビングの床に座る。
机の上には目玉焼きとサラダと温めたココアが置かれてあった。

