「何で中村をあん時選んだんだ?」



「…。」



「瑞季。」




黙る瑞季に俺は瑞季の肩を右手で掴む。




「言ってみ…?」



「~…っ、」




俺が眉毛を下げると、瑞季が困ったように眉毛を下げてポツポツと話し始める。




「あのね。私、さっきも言ったけど不安だった…っ。


私の事を渉は好きじゃないかもしれない。でも、私は好きだって。ずっと悩んでて。


キスマークはつけてくれないけどHはするって私、体だけの関係で割りきられてるのかなって。


凄く不安で、苦しくて、哀しくて…。」




瑞季の手がギュウギュウと。


俺の手を締め付ける。


それに答えるように、俺も瑞季の手を少しだけ強く握った。




「そんな時ね、ふと思い出したの。中村くんが未だに私に好きだって言いに来た事。」




瑞季のこの言葉に動揺して俺の体が少し、揺れた。




「いけないって分かってた。中村くんにも悪いって。


渉にも絶対女としても、セフレ相手としても見てもらえなくなるって。


でも、一人になるのが嫌だった。この虚しさを、悲しさを埋めて欲しくて…。


私は、中村くんに告白の返事を撤回しに行ったの。」