「あたしには無理な話ね………」


「そうね。美優はまず、自分の気持ちから考えなくちゃね」


ツンッと額をつつかれ、のけぞるあたし。


「自分の気持ち?」


「そう……。恋というものがどういうものか。美優、本当の恋したことないでしょ?」


その言い方にムッとする。


まるで自分が何も知らない子供のような言い方。


失礼だよ。


あたしだって、恋ぐらいしたことあるもん!


「あたしにだって好きな人ぐらいいたもん!」


「あ…そうなんだ。でも、いた? 過去形なの?」


言いにくいこと、知らないとは言え、ずばりと聞いてくるな………。


まあ、麻衣に隠す必要なんてないんだけどね。


あたしはフゥ~…とため息をついた。


「この前、失恋した」


「えっ? 初耳。なに、告白でもしたの?」


「してないけど、偶然会って、彼女を紹介された」


「あちゃ~…、決定打だね」


「だから! 今は新しい恋に向けようと思ってるの!」


あたしは肩までの自分の髪に手を通す。


確か、中学の時に鳴海くんが好きな女の子のタイプが髪が短い子だって言ってたから、ずっとこの髪型にしてたのに、実際に鳴海くんの彼女だったあの子はそんなタイプとは正反対の髪の長い子だった。


タイプとかそんなの好きになったら関係ないんだろうな………。